どうして英語の成績が下がってしまうのか(2)
また、幼い時に受けた英語教育法が、後の英文法学習や英文精読への意識に影響することもあるでしょう。スピーキングやリスニングを中心とした「分からない英単語があっても気にせずたくさん聞いて話しましょう」というスタイルは、生きた英語に触れるという意味では効果的ですが、子どもたちに「英語は文法ルールを無視してもたやすく理解できるもの」という印象を与えてしまうリスクがあります。
短い英単語である "it" や "on"
など、代名詞や前置詞の意味をとらえない癖がつき、長文読解で誤訳をする中高生を多く見てきました。精読においてはどちらも重要な語ですが、そのような生徒は大抵「小学生の時から短い英単語は気にしてこなかった」と話します。日本語の文章もそうですが、単語を飛ばして読むと理解に抜けが生じます。英語学習中の子ども達に「英語なんて簡単」と思わせないことは、極めて重要だと思います。
もっとも私自身も「将来に向けて英語に良いイメージを持ってもらうため、小学生の英語学習は楽しくあるべき」という考え方に立ち、小学生授業では英文法学習を織り交ぜつつ、なるべく英語の楽しい側面を前面に出すよう心がけています。中高での英語の難しさについて、小学生にどの程度伝えるべきかは、加減が非常に難しいところです。
それでは、学習の遅れをどのように取り戻すべきかというと、やはり積み重ねによって英文法知識と精読力を定着させていく以外に方法はありません。志望大学によって取り組むべき英文法の比重は大きく異なるため、学校の先生に自分のレベルと目標に合った問題集を薦めてもらったり、塾講師と面談して理解度を評価してもらうことも一つの方法です。英文法問題集に取り組む際には、単元ごとの解説を前もって読み、概要を理解してから問題に取り組んだ方が効果的です。
英語が苦手な高校生は、中学3年間の内容をまとめた問題集に取り組むことで、新たな気づきが得られる可能性が高いです。高校英文法でつまずいたと感じている場合、中学内容にも理解の抜けがあることが多いのです。受験までに時間がある方は、設問の意図を瞬時に理解できるようになるまで、1冊の問題集を繰り返し学習して力をつけていくのが良いでしょう。
生成AIは、英文修正において今や非常に有効なツールです。たとえ学校で使用が制限されていたとしても、うまく活用している人とそうでない人の間で、今後英語力に差が生まれてくることが予想されます。
また、YouTubeには、カリスマと呼ばれる英語講師が文法を丁寧に解説した動画が多数あり、無料とは思えないほど質の高いものが揃っています。自分に合った講師を見つけて繰り返し視聴することで、安定した力がつくこともあるでしょう(理解が難しい場合は、対面や個別での指導が必要となる場合もあります)。
保護者様がお子様を「どうして今まで基礎学習をおろそかにしてきたのか」と叱るのではなく、「これから伸ばしていこうね」と励ましてさしあげることは、お子様のモチベーション向上につながるはずです。
「細かい箇所が分からなくても、どんどん英文を読もう」という主張が広まる中、英語理解が不十分になってしまったという中高生が少なからず存在するように思います。「細かい箇所」とは、具体的にどこからどこまでを指すのかを、平均的な中高生が自力で見極めるのは極めて困難です。
教育指導要領の改訂によって入試の傾向は変化し、今後も日本の英語教育は改革を続けていくことでしょう。しかし、どのように変わろうとも「基本」の重要性は変わりません。「努力は裏切らない」と心に刻み、英語に対して地道な取り組みを続けてみてください。半年、あるいは1年後に、手応えを感じられるはずです。英語が圧倒的な存在感を示すグローバル社会において、中高で培った知識は一生の財産となり、将来、多様な場面で価値を発揮し、豊かな人生の一助となることでしょう。